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「ツノシマクジラ」について(2018/04/10)

先日、角島に行って来ました。

3年前に行った時は、嵐の真っ最中で雨が止んだ隙間でした。

周囲を黒い雲に囲まれて大変雄大でした。今回は快晴の中、橋を渡りました。

さて、人間の神経の分け方に中枢神経と末梢神経に分ける方法があります。

大まかに言うと、中枢神経は脳から脊髄への繋がりであり、「灰白質」と言う神経回路

を持っています。

脳や脊髄から分岐して身体の隅々まで伸びるのが末梢神経です。例外は匂いを嗅ぐ嗅神経と

物を見る視神経でこの二つは外に伸びた脳の一部です。

周囲から感じた情報を脳に送ったり、脳で考えた動きを身体の隅々まで伝えるのに

神経が役立っています。では、脳が全身を把握しているのでしょうか?

脳から伸びる脊髄は頭蓋骨の下の頚髄が最も太く、首回りや上肢(手)に行く神経が分かれて

出て行くとその分細くなります。そして胸やお腹に行く神経が分かれて、

先に行くほど細く・・・ならないのです。下肢(足)に行く神経の付け根である腰髄は再び太くなります。

「膝蓋腱反射」をご存知の方も多いと思います。

「反射」は刺激が脳まで行かずに脊髄で処理されて筋肉を動かす命令が出る現象です。

「膝蓋腱反射」は刺激された筋肉に命令が帰って来る最も単純な「反射」ですが、

実際にははるかに複雑な「反射」が下肢には多くあります。

その複雑な情報処理のために腰髄で神経回路が発達し太くなっていると考えられます。

実際の下肢の運動は、脳からの命令と下肢の反射との共同作業です。

脳が身体の全情報を把握処理して全身を直接動かしている訳ではありません。

神経の伝導速度は秒速30mです。恐竜やクジラでは、尻尾の先から頭まで情報が伝わるのに

1秒かかる計算になります。その遅延を補おうとすると、反射のための神経回路がより

発達する必要があると思われます。

恐竜では腰髄の周りに脳より大きな空洞を持つものもあり、一時は「恐竜は腰で考える」

とまで言われました。現在はこの説は否定されていますが、下肢・下半身を動かす

反射のために太い腰髄とそれを収めるスペースが必要だったのは確かです。

 では現在に生き残る巨大動物「クジラ」ではどうでしょう?

「角島自然館」には「ツノシマクジラ」と言うここで発見されて、後に新種と認定された

クジラの全身骨格標本があります。

クジラの腰髄も恐竜と同様大きく膨らんでいるのでしょうか?

私の見た範囲では、クジラには大きな腰髄を入れるための脊椎の膨らみは

認められませんでした。進化の過程に拠るものなのか、恐竜と哺乳類の違いに拠るものかは

分かりません。

私の妻は、「その腰髄の膨らみって下肢に必要だからできたんでしょう?下肢がないク

ジラにはいらないじゃん!」と言っておりましたが、その辺りが正解かも知れません。

(医局)

用語の解説

脊椎:背骨です。一部が連なることで管(脊柱管)を作ります。部位により、頚椎、胸椎、腰椎など

脊髄:脳から脊柱管に伸びる中枢神経です。部位により、頚髄、胸髄、腰髄など